ソチ・オリンピックの女子フィギュアスケート・フリースケーティングが行われた2月21日はスポーツファンにとって忘れられない一日となりました。前日のショートプログラムで信じられないようなミスを連発した浅田真央が、たった21時間後に「集大成」という本人の言葉通りのスケーティングを見せることを誰が想像したでしょうか。
自分のできるすべてを見る人に届けたいという彼女の思いはスタート時の表情にそのまま表れています。冒頭でこだわり続けたトリプルアクセルを成功させたあとも次々とジャンプを決めて、会場の雰囲気はどんどん盛り上がっていきました。最後までスピードが衰えることはなく、滑り終えたあとに見せた涙、そして笑顔。メダルには届かなかったこの4分間の演技はソチ・オリンピックのハイライトシーンになりました。
「あの子は大事なところで転ぶ」と口を滑らせた森喜朗氏は皮肉なかたちで引き立て役となり、大会前にメダルの獲得数にこだわる発言をしていた橋本聖子選手団長らとともに、スポーツに関わってきた政治家やJOC関係者たちの考え方が20世紀のままであることを露呈しました。
そしてこの日、私にはもうひとつ印象に残ったシーンがありました。最後の演技者となったキム・ヨナがキス・アンド・クライで自身の得点を確認した時に見せたさわやかな笑顔です。「どんな結果となってもそれを受け入れる」という彼女の言葉がまさしく本心であったことを知りました。韓国では今回の採点を疑問視する声があるようですが、本人が潔く受け入れたことで沈静化することになるのではないでしょうか。
競技終了後に見せた上村愛子の涙と笑顔、銀メダルを獲得した瞬間の葛西紀明の笑顔とジャンプ団体で銅メダルを獲った時の涙。
何よりも良かったと思えるのは、こうしたことを通じて、多くの人がオリンピック(スポーツ)をこれまでとは少し違うかたちで楽しめるようになったことだと思います。
今回もテレビ放送で「◯◯選手は4位に終わった」というようなアナウンスが聞かれましたが、今後こうした言葉は使われなっていくでしょう。東京オリンピックのころには「メダル獲得数の目標」みたいなものもなくなっているかもしれません。
「浅田真央の奇跡の4分間」はこうした流れを決定づけた瞬間として長く語り継がれることになるだろうと信じています。
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posted by ikomai-net at 19:09|
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